『来年の話』




「どこまで行くんだよ?」
「さぁ」
「さぁって、骸」
昨日アルコバレーノが、沢田綱吉は体調がよくないと言っていた。
だから絶対、連れ出すんじゃねぇぞ、と。


「元旦に雪が降るのって久し振りだなぁ」
「僕は雪自体を見ることが久し振りですよ」
「じゃあ、いいね、こういうの」
「・・・えぇ」
本気でそうならば、僕が連れだせるように隙だらけの状態で彼を置いてはおくまい。
窓のカギも開き、何の偶然か彼以外皆が買い物に出かけているなんて。


「この辺りです」
「何が?」
「神社」
並盛の学区から彼を僕のテリトリー・・・黒曜まで連れてきて、うる覚えだけれど神社があった地点に向かう。
初詣、なんて神も仏も信じない僕にはふさわしくないかもしれないけれど、彼との一年を祈願するのもなかなかいい。
・・・というか彼のためなら神だろうが仏だろうが信じよう。
六道すべてを知って嫌ってもなお、愛するもののいるこの世界を僕は気に入っているのだから。


「あ、あれじゃない?鳥居みたいなのあるし」
「・・・その、ようですね」
彼が指し、僕も見つけたのは大分古く人通りの途絶えた建物。神社。
新国道の方や並盛との境に大きな神社やお稲荷さんがあるからだろうか、ここはまるで忘れられた場所のようだった。

「・・・ひどいね、これ」
「大きいところに行きますか?」
「そうじゃなくて、こんなになるまで誰も来なかったなんて」
神様がかわいそうだ、なんて言いながら彼は雑草と雪に埋もれたそこへ入っていく。
・・・何を考えているのやら
もし、僕の勘が当たれば面倒なことになる。


「この神社、きれいにしようよ」

ほら、大当たりだ。




「この僕に、一年の始まりに清掃作業をさせるなんて」
「じゃあ一人でやるからいいよ」
「・・・僕もやります」
いつのまにか、雪は止んで日が差しこむほどに空は晴れていた。

ダメツナと呼ばれてやる気のなかった彼はどこへ行ってしまったのか。
そのままなら、契約もしやすかったしこんなことに巻き込まれもしなかった。
いや元はと言えば巻き込んだのは僕かもしれないけれど。

「俺達以外来ないかもしれないけど、きれいにしなきゃ俺すっきりしないから」
「分かりましたよ。手伝います・・・でもその分、」
「その分?」
「今年は僕にも尽くして下さいね」

見える範囲の雑草を抜き終わり、鳥居の外の広場へとりあえずまとめておく。
寒いからあとで焚き火でもして焼き芋でも焼こうか。
それがいけないことなら慎まねばならないかもしれないから一応彼に確認しよう。

彼がぽかんとして返事に困っている間、そんなことを考えながら気を紛らわせた。

「うん・・・骸に一生懸命になるから、俺」
「別に、一生懸命になんてならなくてもいいです」
「嬉しくないのか?」
「はっ!身を尽くして僕のためにしてくれればいいんですよ」
「でも契約はしないからな」
分かってます、という言葉は口には出せなかった。
癪でたまらないけれど、彼に口をふさがれてしまっていたから。

「・・・・・・襲われたいんですか」
「外ではやだな」
「僕も神社ではお断りです。バチがあたったらどうするんです」
「お前、そういうの気にする柄かよ」
「うるさいですね」

あぁ頭にくる。
僕が連れだしたはずなのに
僕の方が優位に立てるくらい力もあるし、いつだって契約もしてしまえるのに。

こんなに翻弄されるなんて。


「きれいになった・・・」
「苦労しましたから」
「ほとんど骸にやってもらっちゃったな」

体が小さい上に動きも鈍い、というかまず体調不良の彼に、寒空の下働かせるのは僕の美学に反する。

それが彼以外の・・・そう雲雀恭弥や獄寺隼人なら死ぬまで働けと思うところだが、今目の前にいるのはいとしい恋人。
どういったわけかすべての主導権は向こうにあるのが少し、気に食わないけれど。


「ね、お参りしようよ」
「・・・この神社に神様はいないかもしれませんよ?」
「いるよ。だって掃除してる最中雪降らなかっただろ」
「偶然ですよ」

言いながらも、彼は僕の手をひっぱるようにして境内を歩いていた。

「今はほら、降り始めたし。骸がいいことするなんて珍しいから神様がびっくりして雪を止めちゃったんじゃない?」
「・・・むかつきますね」

あはは、なんて笑ってわずかに駆け足になった彼を、転ばないようにと歩調を早めて共に歩く。
全く、世話のやける・・・
憎まれ口だけは一人前の小さな少年だ。


大分予定とは違うし、彼に翻弄されるなんて僕らしくもないけれど、これに満足をしてしまう僕がいる。
全てが不思議で、全てが愛おしい。

一体何の作用なんだ。




「何をお願いした?」
「・・・君こそ」
「内緒」
「それなら僕も内緒です」


ちらちらと、再び雪が降り始めた帰り道。
お守りも破魔矢もおみくじもないあの場所を後にして、もう少し進めば見慣れた道路。

「・・・叶ったら、来年も一緒だな」
「それを言ったら意味がないのでは?」
「あるよ。骸以外は分からないだろ?」
冷えた手を繋いで、ぬくもりを分け合って、彼の歩調に合わせゆっくりと家を目指す。
このまま、時が止まったなら二人だけの世界に生きていけるのだろうか・・・

「それなら、僕の願いが叶えば来年も草むしりですね」

そう言うと、こちらを向いた彼が、今年一番の笑顔をくれた。
一番初めの、僕だけの笑顔。



「「来年も、二人で初詣に来ることができますように」」






フリーだったので強奪してきました♪